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【2025年04月20日14:38 】 |
ヒアシお題 二.びゃくがんっ
久々の小話です。しかもヒアシ様です。主役は、親父かよ…でもよいのです。
では、追記でお楽しみくださいませ。


「白眼っ!」

鋭い呼気とともに発せられた厳しい声。
途端に眼の周囲の血管へ集中する多量のチャクラに反応し、やわらかな皮膚を通してピキピキと浮き上がる。
その形相は、異質であり…その眼球は、更に不可思議な光をはなっていた。
恐ろしいほどの気迫を込め、堂々と響き渡るヒアシの声は、迷うことなく威厳に満ち満ちて室内にいる全ての者を圧倒していた。

「……さあ、やってみなさい。ヒナタ…」

白眼を発動したままのヒアシに促され、おずおずと小さな手で印を組む仕草をしているのは、齢三つのまだ幼い娘。
おかっぱ頭も愛らしいヒナタは、父親から教わったばかりの瞳術を見よう見まねで一生懸命に真似してみようとする。

「え、えっと、こうやって…ゆびがこうで…。それで、び、びゃくがんっ…」

ヒナタは、うんしょうんしょと、短い指をそれらしく印のカタチに組み合わせ、精一杯の声をあげる。

「……」
「……あれ?」

初歩的な白眼の発動を、うまくコントロール出来ないヒナタは、おずおずと父親を見上げた。

「繰り返しなさい」

コツを教えるでもなく、怖い顔で娘を見下ろすヒアシに、ヒナタはうるりと眼の奥が熱くなるのを我慢した。

「ふっ…ひっく。び、ゃく…がん…」

嗚咽まじりのヒナタの声が、それでも根気よく続き、繰り返される同じ動作。

いつ発動するかもわからない白眼の訓練を淡々と行う日向父娘を、黙って見守っていたネジは、心配そうな眼を傍らに付き添うヒザシへ向けた。

「ちちうえ、ヒアシさまは、どうしてヒナタさまにもっとおしえてさしあげないのですか?」

ネジが、全幅の信頼を寄せる父ヒザシは、とても丁寧に説明して上手に指導してくれていた為、子供にしてみればヒアシの教え方は、あまりにも難しい。
否。不親切だった。

「私たちが口をはさむ事ではないのだよ。ネジ……」

ネジの疑問をやわらかくいなして、ヒザシは小さく首を振る。

「そんな…。ちちうえが、ボクにおしえてくださったみたいにすれば、ヒナタさまも、すぐできるようになるのにっ」

「そう……かもしれない。けれど、ヒアシ様には、ヒアシ様の御考えがあうのだろう。その邪魔をしてはいけないよ」

小さな子供を突放すような言葉を返し、ヒザシは心の中で呟く。

「貴方は、このこらをどんな風に、どこへ…導くおつもりなのでしょうね」

ヒアシの背は黙して語らず。

「びゃくがん!」

ただ幼く可愛らしい声が、いつ終わるともしれず稽古場に響いていた。










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【2010年05月13日14:48 】 | ヒアシお題 | コメント(0) | トラックバック()
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