日々のネタなどをメモ書き中
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
まだ、日向の双子が幼かった頃のお話し──。
新年早々。寒稽古と称してヒアシとヒザシ兄弟は、まだ空の暗いうちから寝所を抜け出して初日の出を見に行く算段をしていた。 「兄さん…年始の挨拶が終わるまで、屋敷から離れない方がいいんじゃないかな…」 眠たげな子供の声が、ヌクヌクと温かい布団の中から内緒話しをするように小さく囁く。 「朝日なんて毎日見てるんだし、初日の出だって屋敷から見れば十分だよ…」 あまり乗り気ではないらしいヒザシの言葉を、ヒアシはニヤリッと悪戯っぽく笑い弱気な弟を一蹴する。 「なんだヒザシ。今年の干支は寅だぞ。元旦の朝、昇る太陽の光と共に新しい年神を『一番』にお迎えする御利益をむざむざ見逃すのは勿体ないだろう?」 ヒアシは、ゴソゴソと自分の枕を抱えよせ、エイヤッと狙いあわせて弟の寝ている辺りの暗がりへポスンと投げる。 「やめてよ。兄さん…やっと眠くなってきたのに。自分が眠れないからって、僕まで道連れにしないでよね。もうっ!」 どうやら命中したらしい枕を、ポンッとヒアシに投げて返しヒザシは文句をこぼす。 子や丑年の時には、それ程熱心ではなかったヒアシが、何故か今年に限って妙に張り切って初日の出を見に行こうと誘ってくる。 「兄さんが行くなら、ついて行くけど…父上に見つかったら、お叱りを受けるんじゃないかな…」 う~ん。と眉根を寄せたヒザシは、優し気な目元にしばし躊躇する光りを浮かべていたが、最後には兄の意向に添うカタチでコクリと頷いた。 「見つからなければいいのさ。万が一、他の者に見咎められたら、今年最初の手合わせをしていたとか言っておけばいいだろう?たまたま元旦にする早朝の稽古ならば誰も文句はつけまい」 ふふん。と自信一杯な笑顔でヒアシは、弟に言い含める。 「…ムリがあると思うけどなぁ…まあ、その言い訳でも仕方ないか」 時々、変に頑固になる兄を見つめて、ヒザシは、ふーと呆れたように肩を竦めた。 「じゃあ、そろそろ出掛けないと…空が白らんでからじゃ、人目につきやすいし、朝日を見たらすぐ帰ってこないとね」 慎重な面が多いヒザシだが、一度気持ちが決まると、途端に行動が早い。ヨイショと布団を抜け出したかと思うと、素早く防寒着を身につけ、さも二人の子供が眠っているかのように掛け布団を細工してしまった。 「ほら…兄さんも、もっと厚着していかないと、外はかなり冷えますよ?」 冬の夜空の下を出歩くには、呆れる程薄着の兄を急かして、ヒザシはテキパキと手際良く身支度を調えてやる。 「なんだ…やっぱりヒザシも乗り気だったんじゃないか…」 ヒアシが、憮然とした表情で眉間にシワを寄せて弟を睨む。 「兄さんに付き合ってあげるだけです。さあ…そっと気配を消して出ますよ?」 ヒザシは、唇に人差し指を当ててシーと合図してみせてから、渋い顔をしているヒアシを見てクスリと小さく笑った。 「はいはい…分かってますよ。兄さんの考えそうな事は──父上には内緒ですね。早く行きましょう」 ヌクヌクとした真綿の布団を空にして、キンと冷えこむ外気にその身をさらす。そして、まだ日の昇らぬうちに双子は喜々として屋敷を抜け出したのだった。 同じ日に、同じ母の腹から生まれた一卵性双生児。同じ顔、同じ声…けれど異なるその性質。誰よりも近しい互いの魂と、肉体とが、まだ同じ道を歩んでいた頃の──今はもう遠い昔の…。 |
とても、す、ステキなお題を発見してしまいました!
それも、フリー配布されていた!こんなに美味しいお題が…ヒアシのですよ!きゃああああ~(嬉泣) すばやく、こちらにお題配布元のサイト様リンクを貼らせて頂きます。 (草想文集/アキ様 http://soso-bunsyu.but.jp/) 一.僕と弟、ときどき父上 二.びゃくがんっ 三.暗い廊下 四.初恋 五.白眼でも見えないもの 六.うちはの若造と変な金髪 七.初めての任務 八.涙も出ない 九.この力は何の為 十. 弟に「ヒアシ様」と呼ばれた日 十一. 迷うは恥 十二.逃れられない宗家の運命 十三.貴女の瞳に映るのは 十四.好きで跡継ぎに生まれたんじゃない 十五.母の言葉 十六.日向の才 十七.弟を失った兄 父を失った子 十八.後悔 十九.俺の娘対弟の息子 二十. 詫び 二十一.木の葉最強 二十二.間違い探し 二十三.消したい言葉 二十四.忘れ形見 二十五.菜の花に月 二十六.娘よ 二十七.犬と虫が娘の友達 二十八.娘なんて持つもんじゃない 二十九.おいおいおいおい、甥っ! 三十. 妻よ、見ているか 三十一.反抗期 三十二.バカな子ほど可愛い 三十三.チャンネル攻防戦 三十四.「ヒアシ」と書かれたプリンを巡って 三十五.納豆を混ぜるのは父の役目 三十六.洗濯物を分けられて 三十七.日曜日はジャスコがいい 三十八.ヒアシ様、それは売り物です(嘲笑) 三十九.笑える程似合う 四十. 泣ける程似合わない 四十一.この夏こそはサングラス! 四十二.お兄様ですかと言われて 四十三.ネジと色違い 四十四.ハナビちゃんがいない! 四十五.フードコートにて 四十六.上忍班長選抜会議 四十七.定例 父母の会 四十八.大いなる野望 四十九.忍を辞めたくなる時 五十. 我こそは宗家! 五十一.囲碁なんていかが? 五十二.おいろけのじゅつ! 五十三.慰安旅行 五十四.秘伝・日向一発芸 五十五.通販生活 五十六.男の料理 五十七.録画予約 五十八.旧友が尋ねて来た日 五十九.初夏の宵 六十. まだまだ現役 六十一.吠える 六十二.泣いて、笑って 六十三.父として 六十四.ただの男 |